彷徨うITエンジニアの雑記

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日本国内で購入可能な企業向けファイルサーバについてまとめてみた

2019年12月現在、日本国内のリセラーから購入可能なファイルサーバについてまとめてみました。

職務的に情報量に偏りがあるのは許してほしい。

 

 

ターゲット

この記事は組織のIT担当者で、ファイルサーバの導入・リプレースを検討している人を対象としています。

HA必須、Windows Server等の汎用OSは除外、イニシャルX00万円以上を想定しています。

最近のエンタープライズ向けNASはその機能に大差はないため機能比較はしません。ただしアーキテクチャや機能の実装方式は異なるし、サポートされる機能にも制限事項が存在します。詳細は取り扱いベンダやメーカーに確認して下さい。

この記事が情報収集のとっかかりにでもなればと思って書いています。

 

用途

NASといっても様々ですが、この記事では一般的な企業向けファイルサーバに限定します。

  • Officeドキュメント等を保存する社員向けのファイルサーバ
  • ホームディレクトリ、ユーザプロファイル置き場

 

HPC、メディア、ヘルスケア、仮想化等、特定用途向けのストレージを探している人は、対象システムの構築を生業としているベンダから情報収集することをお勧めします。

 

アプライアンス型とSDS型(Software Difined Storage)

 

アプライアンスは専用ハードウェアとストレージOSをセットで提供するタイプ。 めっちゃ寡占状態。最近はvSphereやパブリッククラウド向けに仮想アプライアンスを提供するようになった。メインはオンプレ&ハードウェアで、レプリケーション先は仮想アプライアンスで、みたいな使い方が多いと思います。

 

メリット

  • ハードウェアとストレージOSのコンパチビリティを考慮する必要が無い
  • 専用ハードウェア向けにチューニング済み(安定性・パフォーマンス)
  • サイジングが簡単。大抵、専用のサイジングツールが提供されている。
  • 保守が1本化される。トラブルが発生しても原因調査から解決法の提示までスムーズに進むことが多い。

 

デメリット

  • 構成の自由度が低い
  • 保守・増設コストが高くなりがち(イニシャルは結構下がるケースが多いので、最初からオーバーサイズで購入した方が安かったりする)

 

SDSは汎用サーバにインストール可能なストレージOSのみを提供するタイプ。ただし複数のサーバメーカー等とパートナー契約し、テスト済みのサーバにソフトを乗せてアプライアンス提供しているケースも多い。

 

メリット

  • システム要件にあったハード構成を組むことが出来る、逆にハードの設計が必要とも言える
  • メモリやCPUなどパーツ単位の増設が可能
  • 大人の事情で購入するハードウェアメーカーが限定されるケースに対応できる(コンパチビリティリストは遵守しよう)
  • アプライアンス提供の場合はテスト済みのハードウェアで提供されるため、コンパチビリティテストを省略できる
  • アプライアンスなら保守窓口をハードメーカーに1本化出来るケースもある

 

デメリット

  • ハードとソフトで保守が分かれている場合、障害発生時にハードメーカーとSDSメーカーをたらい回しにされる可能性がある
  • さらにハードウェアのファームェアに起因する障害だった場合、修正版が存在しないとユーザー負担で代替品を調達するしかないかもしれない。コワイ!!
  • なので、SDSの場合もアプライアンス推奨だが、構成の自由度は低くなる

 

スケールアップ型とスケールアウト型

スケールアップ型はコントローラとバックエンドストレージから構成されます。コントローラは大抵2ノードのHA構成で、ファイルシステム、CIFS/NFSサービス、クラスタリング機能、等を実行します。

  

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ディスクを増設する場合は空きスロットにディスクを追加するか、ディスクエンクロージャを追加します。コントローラ性能を増強する場合はCPUやメモリを増強するか、上位モデルに交換する必要があります。

スケールアップ型を選択する場合は、リソースのフォーキャストとハードウェア構成の上限を考慮する必要があります。構成の上限に達した場合は新たにNASを調達し、クライアントアクセスを分散しなくてはなりません。ファイルサーバの乱立、サイロ化とか言われているのはこのことです。

 

スケールアウト型は複数のストレージノードが単一のクラスタを構成します。コントローラ機能とディスクを搭載したストレージノードをノード間通信用ファブリックに追加していくことで、ディスクとコントローラを同時に拡張することが出来ます。

 

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スケールアウト型の構成の上限はクラスタの最大ノード数になります。

大規模環境や、将来の要求リソースの予測が付きにくいシステムなどにマッチし易いソリューションです。

 

アプライアンス NAS製品の紹介

 

NetApp FAS/AFF

所謂アプライアンスNASと定義されるものを初めて世に送り出したメーカーです。NAS専業(最近はHCIもやってる)25年以上の超老舗。

モデルはSSD、HDDのハイブリッド構成可能なFASシリーズと、オールフラッシュのAFFシリーズを提供を提供しています。エントリーからハイエンドまで対応可能です。スケールアウト可能ですが、2コントローラ構成のスケールアップ型として導入される事例が殆どだと思います。

一貫してONTAPと呼ばれるストレージ専用OSを採用していますが、スケールアウトに対応するため、2004年にSpinnaker Networksを買収しコードの大規模な書き直しを行っています。現行バージョンはONTAP9.6となっています。

仮想アプライアンスはvSphere版とAWS/Azure/GPC版が提供されていて、複数のプラットフォーム間で連携可能です。

長年の蓄積があるため、NASに関してNetAppで出来ないことはほぼないと言ってもいいくらい多機能ですが、シンクラ界の老舗のCitrix製品と同じくパラメータがすげー多いのが難点。設計構築は導入経験豊富なベンダに依頼しましょう。

その他の大きな特徴はWAFL呼ばれるファイルシステムで、メモリ上でランダムI/OをHDDに有利なシーケンシャルI/Oに変換してからフラッシュします。WAFLはポインターベースのスナップショットにより、データ書き換え時の性能劣化がほぼ発生しません。ボリュームレベルのリストアも非常に高速です。

I/Oのシーケンシャル化や、Redirect-on-Write(RoW)と呼ばれるスナップショット方式は現在では複数のベンダが採用していますが、WAFLとして特許を取得したのはNetApp社です。*1

アーキテクチャは若干レガシーだが枯れている分、安定性は断トツだと思います。運用開始後のトラブルはかなり少ない印象。

 

Dell EMC Unity

2016年にDellに買収されましたが、EMCもストレージ界の老舗です。Unityは旧EMC VNXの後継シリーズ。

現行は第3世代のUnity XTシリーズで、NetApp同様ハイブリッドモデルとオールフラッシュモデルが提供されています。エントリーからミッドレンジに対応。分類としてはスケールアップ型NASとなります。

Operation Environment (OE)と呼ばれるストレージ専用OSを全モデルで採用していて、現行バージョンはOE5.0となっています。

仮想アプライアンスはvSphere版とVMware Cloud on AWS版が提供されています。EC2ネイティブ、その他パブリッククラウドは非対応。VMwareDell傘下だからね、仕方ないね。

設計が新しい故か、NetAppとは逆にパラメータが少ないです。設計から担当するなら勉強して資格取った方がいいと思いますが、セットアップだけなら多分1日程度のトレーニングで足りてしまいます。細かい設定が出来ない分、「仕様」で済ませられるのは大きいです。

スナップショットはNetApp同様RoWのためパフォーマンス劣化は発生しません。

その他NetAppに無い特徴として、オールフラッシュモデルのみ、ディスクをチャンクレット単位に分割してプール化するDynamic Poolを採用しています。これは3PARやDeclustered Raidと同様の方式で、筐体内のすべてのディスクにI/Oを分散させることが出来るため、I/Oの高速化、リビルド時間の短縮、専用スペアディスクの排除を実現します。SSDの増設が1本単位で可能という点も大きなメリットと言えます。

 

Dell EMC isilon

Isilon Systemsは独立ストレージメーカーでしたが、2010年にEMCに買収されました。

現行は第6世代で、オールフラッシュ、ハイブリッド、アーカイブ向けのモデルを提供しています。ミッドレンジからハイエンドに対応。スケールアウトと言えばisilonというくらいスケールアウトNASの代表格で、クラスタあたり最大252ノード、66PBまで拡張可能です。

OneFSと呼ばれるFreeBSDベースのストレージ専用OSを全モデルで採用していて、現行バージョンはOneFS8.2となっています。

isilonは筐体内でRaidを実行せず、ノードレベルでデータを分散配置&Erasure Codingによるデータ保護を実行します。ファイルを128KBに分割し、ノードレベルでデータをストライプ、FEC(前方誤り訂正)を追加することでN+Mの保護レベルを実現しています。

メディア系等、大きなサイズのファイルの格納に適したアーキテクチャですが、一般的なファイルサーバとしても多数導入されています。最近のバージョンでは、オーバーヘッドが大きいスモールファイルを効率的にアーカイブするCompaction機能もサポートされました。

スナップショットはNetApp同様RoWのためパフォーマンス劣化は発生しません。

また、isilonの特徴としてユーザビリティが上げられます。クラスタ全体で単一のファイルシステムを構成し、シングルネームスペースを提供するためボリューム構成で悩む必要は無く、保護レベルやスナップショットはディレクトリレベルで設定出来ます。またクォータも非常に柔軟で、ネストや容量監視のみのクォータ設定が可能です。

拡張はGen6の場合2ノード単位の追加、ディスクはフル搭載が条件となっています。予算確保に時間がかかる組織で導入する場合は、リソースのフォーキャストを得るためIngishtIQ等、分析ツールの導入を推奨します。というかどのストレージを購入するにしろ、純正の分析ツールは導入して欲しい。

  

SD NAS製品の紹介

Nexenta NexentaStore

OpenSolarisカーネルフォークであるillumosをベースとした、ストレージ専用OSのディストリビューションNexenta Systemsが商用提供していましたが、2019年にHPC系のDataDiect Networksに買収されました。

Solarisの成果であるZFSを使用するのが最大の特徴で、シンプロビジョニング、スナップショット、クォータ、レプリケーションSSDキャッシュ、暗号化等、エンタープライズNASに必要な機能はほぼ網羅しています。

逆にZFSといえばファイル削除が遅いとか、スナップショットがCoWだからI/O負荷が大きいとか、重複排除が重いとか言われていますが、オールフラッシュ構成にしたりメモリ増強で回避出来るケースもあります。ノウハウのあるベンダにハードウェアサイジングと構築を依頼すれば、パフォーマンス問題は回避出来ると思われます。

Nexenta公式サイトからDell、HPE、Supermicroのサーバを使用したリファレンスアーキテクチャが公開されています。*2

国内ではコアマイクロシステムズが自社ブランドのストレージサーバを、アセンテックがLenovoサーバベースのアプライアンスを販売しています。国内ではコアマイクロ社が一番ノウハウを持っていると聞いたことがあります。

分類としてはスケールアップ型NASで、エントリーからミッドレンジまでカバーできると思われます。

HAクラスタを構成する場合はSAN接続の共有ディスクが必要ですが、マルチノードサーバを使用するとアプライアンスっぽくコンパクトに収まります。

 

Qumulo

旧isilonのメンバーらが2012年に立ち上げたSDSメーカーです。

スケールアウト型NASで、シングルネームスペースの提供、Erasure Codingによるデータ保護など、SDS版isilonと言っていいかと。コマンドラインもisilonに似てます。

Qumulo Filesystemと呼ばれるファイルシステムがコアテクノロジーで、フラッシュデバイスを前提としたモダンな設計思想となっています。

isilonはファイルを128KBのチャンクレットに分割しデータ保護を実行していますが、Qumuloはブロックレベルでデータ保護を実行しており、4KBブロックによるアドレス管理・セグメンテーション・エンコーディングを採用しています。スモールファイルについてisilonより容量効率が良く、リビルドも高速、様々なワークロードに対応可能と言われています。*3

またファイルシステムに分析エンジンが統合されているのも特徴で、リアルタイムに容量・パフォーマンス分析を実行可能です。

ハードウェアはオールフラッシュ、ハイブリッドモデルがQumuloブランドで提供されていますが、2019年現在国内のリセラーは存在しません。

ただしHPE Apollo 4200、Dell EMC RX740xdにQumuloのソフトウェアを組み込んだアプライアンスが提供されていて、少なくともHPEモデルは国内で購入可能となっています。ノードあたり90TBからなので、isilon同様ミッドレンジからハイエンド相当の製品です。*4

 

Datacore vFilo

SDS老舗のDatacore社が、2019年11月にリリースしたばかりの製品です。

同社はSANsymphonyというWindowsベースのFC/iSCSIストレージを長年提供してきましたが、vFiloはストレージ専用OSにて提供されるNAS製品となっています。

現状まともな情報ソースは公式のインストールガイドと、ジャパンの中の人Qiita投稿くらいしかないです。*5

以下は流し読みした内容。

スケールアウト型のSDS NASで、メタデータノードのAnvil、データノードのDSXから構成されます。メタデータとデータが分離している辺りはLustreっぽい。リアルタイム分析等の機能追加を見越してメタデータを分離しているのかもしれないです。

インストール先はベアメタル、またはvSphereをサポートしています。

Anvilは共有ストレージレスのHA構成が可能です。

DSX部分がスケールアウト可能で、データレイアウトはStripingとMirroringが選べるようです。SimplivityのようにハードウェアRaidと併用する前提と思われます。

DSXは外部のNFSストレージ、AWS/Azure/GCPのオブジェクトストレージに対するゲートウェイ(Mover)としても機能します。

HAで最小4ノード構成ですが、ディスク構成は自由に決められそうなのでエントリークラスとしても導入できそう。

Audit、ユーザクォータは未実装ぽい。グローバルネームペース、暗号化、重複排除・圧縮、S3互換プロトコルはComing soonになっていました。

機能はまだ足りないし検証してみないと何とも言えませんが、NASの選択肢が増えたことは素直に歓迎したいです。